私、幸せです

    「香穂ちゃん」 放課後、2年2組まで行き、扉から名を呼び、香穂子を見つけると微笑んだ。 香穂子は急いで荷物を用意し、の元まで駆けて来た。 「どうしたんですか?」 「お話したいことがあるんだけどね、ちょっと良い?」 「はい。良いですよ」 「良かった。じゃあ、行きましょう」 その表情は、昨日までのと違い、どこか晴れ晴れとして幸せそうで 香穂子は何だか自分もその幸せの空気を分けてもらったような気になった。 「内緒よ。香穂ちゃんだけに言うの」 人差し指を唇につけ、初めにそう告げる。 その言葉は自分だけ特別扱いされているようで、何だか嬉しくて。 「分かりました」 香穂子は約束した。 心の中で、指きりをして。 「あのね、私・・・・・・・」 恥ずかしそうに顔を赤らめる。 声がどんどんと小さくなっていく。 下に俯きかけていた顔を上げて、微笑んだ顔は 「梓馬と、お付き合いをすることになったの」 とても幸せそうで。 その表情にばかり気を取られ、聞いた言葉はとても驚くべきことなのに 「おめでとうございます」 なんて、たった一言で片付けてしまいそうになったところでやっと気付き 「・・・・・・って、えぇ!!??えっ、お互い好きなんだろうとは思ってましたけど。えっ?っと・・・・・・告白はどちらからで」 「梓馬からよ」 「あぁ・・・・・・」 柚木がどんな告白の仕方をしたのか物凄く気になったが、そこはプライバシーということで聞かないでおく。 ただ、二人はお似合いだと思っていたから。 純粋に嬉しかった。 が誰か一人のものになってしまうのはちょっぴり悲しいけれど。 あの日、隣りで歩く二人の後ろ姿を見送った日。 初めて見た光景なのに、非常にしっくりきて 彼は彼女の隣りに、彼女は彼の隣りにいることが一番なのだと 不思議と思っていた。 「私ね、今とても幸せなの。眩暈がするくらい。家の事情とか色々不安はあるけれど、梓馬の隣りにいられることが、嬉しいの」 きっと心の中にはまだ、多くの悩みを抱えているけれど あの日のように悩みが表情へと出ていない。 幸せに包まれているを見て、もう一度香穂子は 今度はちゃんと心から 「おめでとうございます」 祝福の言葉を贈った。 「ありがとう」 ふんわりと、は微笑んで きっと愛しい人を想っているのであろう。 その顔を虚空へと向けた。   +++++++++++++++++ 〔誠恋パヴァーヌ〕これで終わりです。 次から恋愛要素強くなります。
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