好きな奴ほど、苛めたくなるって言うだろう?
「伴奏者を変えたい!?」
誰もが認める優等生から発された、思わぬ言葉に少々吃驚した。
「えぇ」
柚木は微笑を崩さず、頷く。
その微笑が何時もとどこか違う事に気付く者など、今現在ここにはいない。
「いきなりどうしたんだ?」
「予てから伴奏をしてもらいたいと思っていた人に、やっと承諾してもらえたんです」
次の笑顔は、分かった。
誰が見ても、幸せそうな欣幸の笑顔。
金澤は表面、面倒くさそうに頭を掻いていたが
内心、柚木のこれほどの笑顔を見たことがなかったのでやってやろうと思っていた。
面倒くさいことは変わりないが・・・・・・。
「分かった」
「ありがとうございます」
「あっ、ちょっと待て!」
頭を下げて、立ち去ろうとする柚木を金澤は慌てて引き止めた。
「何ですか?」
「新しい伴奏者の名前くらい言ってけ」
「あっ、すいません」
その唇から発された名は
学院にいる生徒なら知らぬ者などいないほど有名な名前で。
けれどそこだけに驚いたのではなく
「です」
彼女が伴奏を・・・・・・しかも柚木の伴奏をやるという、報道部なら喜んで飛びつきそうな組み合わせに、
金澤は目を見開いたのだった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「・・・・・・ということで、第3セレクションからお前、伴奏な」
「えっ!」
いきなり呼び出されて練習室まで足を運んでみると、
扉を開いた瞬間手を掴まれてピアノの前に座らされ楽譜を手渡された。
そして、伴奏者のことを聞き、驚愕したのだった。
「ちょっと待って。それ、良いの?」
「ちゃんと金澤先生に許可は取ってきた」
「えっ、でも私で良いの?ピアノはもう趣味程度だし、先生には付いてもらってないし・・・・・・」
「良いんだよ。お前が良いんだ」
その真っ直ぐな、嘘偽りない言葉に
は俯きかけていた顔を瞬に上げて柚木を見上げた。
「どうでもいい奴なんかより、好きな奴に弾いて欲しい。それに、お前、自分のこと
低く見すぎじゃないか?お前のピアノは、悪くない」
「ありがとう・・・・・・」
紅玉を赤に染めて、向けられた笑顔に胸は高鳴る。
抑えていたものが抑えきれなくなって
感情は胸の防波堤を優に越え、もの凄い勢いで己を支配する。
「どうしたの?梓馬」
一歩近付いて、華奢な肩を掴んで
「梓んッ」
その艶やかな唇に口付けた。
クセになりそうな感触。
人間にこんな柔らかい部分があることなど知らなかった。
離しては口付け、離しては口付け。
酸素を補給する隙も与えない。
「ちょンっ・・・・・・あず・・・、ま・・・・・・」
抵抗はせず、柚木の制服をギュッと握って。
頬をもっと赤らめて。
目尻から一筋、涙が零れた。
だんだんと波は収まっていき、やっと唇を離してやると
は苦しそうに酸素を求め、荒い呼吸をし
柚木を睨んだ。
「・・・いきなり、何するのよ」
「したかったから」
「だからって!こんな・・・初め、てなのに・・・・・・もうちょっと優しくしてくれたって、良いじゃない」
どんどんと小さくなっていく声、俯いていく顔。
愛しくて、愛しくて。
「今度からは制御するよ」
優しくその胸に抱くと、はぴくんと少し身体をビクつかせたが
徐々に力が抜けていき、大人しく顔を埋めた。
「絶対だからね」
「それは約束出来ないな」
「何でよ」
「外れた螺旋を元に戻すのはけっこう難しいんだ。そのときは、覚悟しろよ」
意地悪に、耳朶を噛むように囁かれ、身体が熱くなる。
けれど反論出来ないのは
彼を、愛しているから。
は頷くように、柚木の服を握る力を強めた。
彼らは知らなかった。
彼が、いたことを。
そして彼が見ていたことを。
+++++++++++++++++
エロいよ、柚木さん!
〔リゴレット〕はこれのみです。
「リゴレット」の意味が「王は楽しむ」でして
題名に悩んできたときこの言葉に出会い
「うん・・・柚木は王様みたいな感じもするから・・・・・・楽しんでるし、これで決定☆」
と決めたものです。
柚木が主人公で楽しんでいる回は、この題名を使うつもりです。
次は、「彼」とは誰か!?です。
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