貴方を愛しているからこそ、嫉妬をしてしまうの
黒い感情を持つ事は、いけないことだと思っていました。
嫉妬というものは醜いものだからと
芽生えかけたそれは早めに摘んで
心から美しい女性になろうと思っていました。
でも、それは浅はかな考えだったのですね。
『恋に嫉妬はつきもの』
ある日姉様が、ふいにそんなこと話しました。
それは醜いものではなくて、恋をしている証。
決して美しいモノではないけれど、好きな人が自分ではない女の子と仲良くしているのを見て普通でいられるなら、それは恋ではないのだと。
そう、姉様はおっしゃいました。
私が恋をしていることを見抜かれているようで不安だったけれど
それから私は、嫉妬とも向き合えるようになりました。
けれどやはり、あまり良い感情ではありません。
だって、この感情を向けたくない人にさえ、勝手に抱いてしまう事もあるのですから。
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コンクールの参加者達で、アンケートを行っていたことがありましたね。
香穂ちゃんにアンケート用紙を渡され、それに記入をしてからしばし話していると
私達の元に梓馬がやってきました。
まだこの時は、お互いの気持ちを知り合っていないので、会話などほとんどしません。
途切れた香穂ちゃんの言葉、態度から
私は察しました。
梓馬の本性を、知ったのではないのかと。
梓馬がそれを他人に勘付かれるヘマをするはずがありませんから、
考えられる可能性はただ一つ。
自分で明かした、ということ。
そう思った瞬間、私の中に黒い感情が小さな芽を出しました。
香穂ちゃんに、対して。
私はその感情をこれ以上育てたくなくて
久しぶりに梓馬と言葉を交わしたにも関わらず、直ぐに終わらせて
香穂ちゃんと少しだけ話して、その場を去りました。
その時芽生えた感情は
向き合っても向き合っても受け容れられなくて
芽を摘んでも摘んでも出てきます。
その感情とさよなら出来たのは、つい先日。
梓馬が、香穂ちゃんに本性を明かした理由を話してくれたからです。
それは、愛の証でした。
それを知って私は、嬉しくなり
そして香穂ちゃんに対して申し訳なくなりました。
愛の証という名の嫉妬の所為で、私は嫉妬をしていたのです。
今は隣りにいる梓馬。
とても、とても愛しい人。
「梓馬」
名を呼べば直ぐに
「何だい、」
私を見て微笑んで、名を呼んでくれる。
「何でもないわ。ただ、名前が呼びたかったの」
「おかしな奴」
「だって、ほんの少し前まで、こんな関係になれるなんて思っていなかったのよ。
・・・・・・今、凄く幸せなの。この時間が永遠に続けばいいのに」
今一番の、素直な願いを発した私を
梓馬は後ろから優しく抱きしめました。
「大丈夫だよ。永遠に続くさ」
「でも・・・・・・」
「もしものことがない限り、相手はお前だよ」
「もしものことがあるかもしれないじゃない」
梓馬は不安がる私を抱きしめる力を強めました。
「お前でなければ俺は嫌だ。お前でなければ・・・俺は、家を捨てても良い」
そんなこと無理だと言おうとしました。
家は捨てられません。
梓馬も、私も。
けれど、真剣な言葉は、純粋に私の胸に響いたのです。
ですから
「ありがとう、梓馬」
ただそう言って、回された手に私の手を重ねて。
今のこの、ダイヤモンドのように輝き、ろうそくの炎のように優しく温かい幸せを
抱きしめる事にしました。
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回想終了です。
言わせたい言葉も言わせられたし、短いお話ですが個人的に満足な作品です。
お次は・・・・・・柚木と香穂子の婚約騒動でしょうか?
ちなみに主人公ちゃんには、姉と兄がいます。
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