好きな人………ずっと、ずっと
日差しが強くなってきたので、日傘を差して歩きます。
何時も学校への登下校は車ですが、歩きたい気分の日は歩いて学校へと向かいます。
この坂道は確かに少し大変ですけど、2年以上も通っているのでもう慣れました。
そんなとき
私の真横に黒い車が止まりました。
乗っている人の顔は、スモークガラスになっていて見えません。
でも誰だか分かります。
私の―――――好きな人
柚木 梓馬。
何時の間にか好きになっていました。
気付いたら止められなくなっていた、想い。
けれどそれを表に出してはいけないと小さいながら分かっていましたから
私はそれをずっと心に仕舞い込んできました。
私は一人の女である前に、家の娘。
結婚は会長である私のお祖父様が決めた人とすることになります。
婚約者候補はたくさんいらして、全員知っているわけではありません。
取引先の方のご子息や昔からお付き合いのある方のご子息や良家のご子息など。
梓馬も婚約者候補の一人で、家と縁の深い柚木家の三男。
何処よりも柚木家と銛塚家は関係が深く、その関係をより深めるため、過去に何組も
柚木家の者と銛塚家の者は交わってきました。
けれど、その血は今薄れつつあります。
お祖父様達は私の姉様と梓馬のお兄様のご結婚を望んでいたようなのですが、
犬猿の仲・・・・・・とでも言いましょうか。
二人は顔を見合わせる度に喧嘩をし・・・喧嘩するほど仲が良いとも言えると思いますが、
端から見てあまり仲が良いとは思えない二人を結婚させて、それが原因で亀裂を生み出す事を好しとはしないので、
その役目は私達へと回ってきました。
でも、だからといって結婚できるとは限りません。
もし、私達が仮に愛し合ったとしても
お祖父様と先生・・・・・・私の華道の先生である梓馬のお祖母様に認められなければ、
お互い好きでもなんともない人と結婚をして、一生を送ることになります。
ですから、気をつけていました。
この想いをこれ以上育てないように。
しかし、心はそう簡単に制御出来るものではなく
私の意志とは反対にどんどんと恋心は加速していきました。
仲が良かった。
良くお互いの家に出入りしていたので、良く話したり一緒に勉強したり。
梓馬がフルートを吹くとき、私はピアノを弾きました。
でも
高校生になった直後、誰よりも近かった距離が、遠くなってしまったのです。
「梓馬」「」と呼び合っていたのに、高校では「梓馬さん」「さん」。
話しかけられないので、それに習うよう私も話しかけません。
何時しかお互いの家で話すことも少なくなってしまいました。
何故?
先に離れたのは梓馬でした。
何故?
疑問は何度も何度も湧いて出てくるけれど、私はそれを無理矢理消して、梓馬のするようにしました。
それは暗黙の了解だったのかもしれません。
婚約者候補の一人でしかない私達は、これ以上近付いてはいけない。
異性なのだから、距離を開けて付き合わなければならない。
高校で梓馬を見かける度、色々な女の子が梓馬を取り囲んでいて、胸が痛みました。
家で合っても、必要最低限の会話を交わすだけの関係に、泣きたくなりました。
それでもこの関係を崩してはいけないのだと、自分に言い聞かせて
高校生活を送ってきました。
〔好き〕な気持ちも忘れよう。
もし梓馬ではない人と結婚することになったとき、この気持ちは邪魔になります。
そう思いながらも、全く忘れられず、高校三年生になってしまいました。
そして今日。
関係を梓馬が壊しました。
梓馬が引いた線を越えて、壁を壊して。
嬉しかった。
それとは反対に不安でした。
また、離れていってしまうのではないかと。
けれど
「それでも良い」
と思うことが出来たのは
拒絶した私の手を、引いてくれたから。
ねぇ、梓馬。
何故、手を引いてくれたの?
何故、拒んだ私に優しい言葉をかけてくれたの?
信じて良い?
それは心から出た言葉なのだと。
上辺ではないと。
もう迷いません。
私は一生涯、誰と結婚しようとも
あなたを愛する気持ちを忘れません。
大切にしたいから
この想い。
きっと、一生に一度の
本物の
恋心。
これを私からあなたに伝える日は来ないでしょう。
あなたとの結婚が決まらない限り。
もしもあなたが
私のことを「好きだ」と言ってくれない限り。
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お嬢様言葉が大変です。
けれどそこまで(「〜ですわ」など)の言葉を使う子ではないので。
上品に書けていれば良いのですが。
敬語キャラではありません。
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