私を不安にさせるのは、貴方
「それで話は・・・・・・」
香穂子がそう言葉を発すると、は何故か切なそうに微笑んだ。
一呼吸置いて、は口を開いた。
その表情には少しの憂い。
「ねぇ、香穂ちゃん。どうして私と梓馬がお付き合いしているって思ったの?」
〔梓馬さん〕とは言わない。
香穂子は知っているから。
その問いに対して、香穂子はほんの少し前の過去を思い出しながら答えた。
「思ったというか、聞かれたんですよ、友達に。柚木先輩と先輩って付き合いだしたの?って」
「・・・・・・そのお友達は何故私と梓馬がお付き合いしているって思ったのかしら?」
の表情は、疑問を持っていない。
薄っすらと微笑を浮かべ、ただ答えを待っている。
それに香穂子は気づきながら、話を進めた。
「朝、一緒に登校しているのを見たらしいですよ。同じ車から降りてきたって。・・・・・・本当ですか?」
「えぇ、本当よ」
香穂子の問いに、間も空けずに答えたは言葉を発し出す。
今日あったことと、そしてそれに対して思ったことを。
「梓馬が無理矢理車に乗せたの。酷いと思わない?いきなり腕を掴んで引っ張って、
私が梓馬の上に倒れ込んだのを良しとして私の意見も聞かずに車を発車したのよ」
梓馬の行動に苦笑し、唇を尖らせるに香穂子は微笑んだ。
しかし、次のの表情を見て、笑みは消えた。
だって、とても切なかったから。
その表情が。
「ねぇ、香穂ちゃん。どうして梓馬はこんな行動をとったのだと思う?」
「えっ、と・・・・・・それは・・・・・・・・・」
答えられなかった。
適当な答えは許されないから。
それは、をもっと不安にさせるだけだから。
悩む香穂子を見て、は微笑む。
その微笑に何故か心が痛んだ。
どうして、そんなにも切なげな顔をするのだろうか、彼女は。
「距離を置いたのは梓馬からだったのよ。でも梓馬は今日、距離を元に戻してきた。どうしてかしら?」
フェンスにそっと手を置いて、空を見上げる。
香穂子はその背を見つめた。
「これは喜んで良いことなのよね。でも素直に喜べないの。だって、また距離を置かれたら寂しいじゃない。
期待した自分が馬鹿みたいじゃない。元の関係に戻れるんだ、って。・・・・・・どうすれば良いのかしら、私」
振り向く彼女に、涙は似合っていた。
しかしその瞳に涙はない。
乾いた瞳に、濡れた表情。
そのに視線は釘付けになる。
一瞬、何も考えられなかった。
だから振り向きながら発された言葉が自分に対してなのだと気付くのに少しだけ時間がかかってしまった。
今度こそ答えを出さねばならないと、開いた口。
「えっと、そんなに悩まない方が良いですよ。ほら、柚木先輩は気まぐれな所があるじゃないですか。
だから、今後の柚木先輩の出方を見て考えれば良いんじゃないですか?」
変な汗が出た。
背中がひんやりとする。
「・・・・・・そうね。ありがとう」
微笑むは、香穂子の言葉に満足しているとは決して言えなかったけれど、納得しているようには思えて。
どうにか安堵する。
はまた香穂子に背を向け虚空を見詰めると、呟いた。
「・・・・・・ねぇ、梓馬。あなたは何を考えているの?」
そんなを見て、香穂子は考えていた。
「(やっぱり先輩って・・・・・・)」
前から思っていたことが確信に近付いた気がした。
「(柚木先輩のことが好きなんだ・・・・・・たぶん)」
そんなは、虚空に憂苦の吐息を吐き出す。
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香穂子は色々話せる仲。
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