見上げた青空は、痛いほど青くて…
    
自分でお弁当を作って、朝ご飯を作って一人で食べて、まだ寝ているお母さんの分にラップをかける。
歯を磨いてもう一度忘れ物がないかをチェックして、お母さんの寝室を覗いた。
寝ている。
一体昨日は何時まで仕事をしていたのだろうか。
帰って来たのは今日だということは分かる。
12時まで起きていたけど、帰ってこなかったから。
遅くまで残業をして、普通のサラリーマンやOLよりも少し遅く出社。
母は所謂キャリアウーマン。	
父を病気で亡くしてから、母との思い出はばっさりと途絶えてしまった。

「いってきます」

蚊の泣くような声でお母さんに向けて言うと、静かに戸を閉めた。
そして靴を履いてからもう一度

「いってきます」

と言い、家から出た。

朝日が眩しく、私は目を細め、手を翳した。
掌は光を通し、少し明るくなる。

ちょうど

「いってきまーす」

ライトの妹の粧裕ちゃんが元気良く家から出るのとほぼ一緒だったらしく
粧裕ちゃんは私にすぐさま気づき

「ちゃん、おはよ―!」

私に手を振ってきた。

「おはよ、粧裕ちゃん」

私も小さく手を振り返す。

私達は並んで歩き出した。
学校へ行く道のりは途中まで一緒なのだ。

「ライトはまだ寝てるの?」

ただなんとなくライトのことが気になって疑問符をあげてみた。
すると粧裕ちゃんからは一瞬にして笑顔が消え、心配そうな瞳で私を見た。

「お兄ちゃんね、この頃少しやつれてるの。ご飯の量も少し減っててね、どうしたの?
って聞いたら、ちょっとストレスがなって言ってた。受験生ってそんなに大変なの?」
「う―ん…普通の学生には大変だと思うよ。だって大学受験を失敗したら将来の夢が叶えられなくなっちゃうからね。
でもライトは絶対大丈夫だから、そっとしておいてあげれば良いんじゃないのかな?心配すると余計ライトにも心配かけちゃうと思うし」
「そっか。ありがと、ちゃん」
「どういたしまして」

そう答えたものの、心の中では不安だった。
あのライトが受験のストレスを抱えているわけがない。
じゃあ何が原因?
友達関係?家族関係…はないとして、じゃあ女関係?う〜ん、絶対ないな。
ライト、モテるけどそんな気にしてなさそうだしね。
利用はしそうだけど。


とにかく心配なので、帰ったらライトに連絡してみることにした。
 

「今日は日差しが強いな……」

空が青いよ、ライト。



 

 

         01








学校から帰り、制服を着替えずにベッドにダイブする。
ブレザーのポケットから携帯電話を取り出して、ライトに電話をかけた。
ライトとはメールより電話の方が多い。
お隣同士だから直接会いに行けば良いだけなんだけど、やっぱり事前の連絡は必要だしね。
だって、曲がりにも私達は異性同士なんだから。


呼び出し音が耳元で鳴り響く。
ライトの声は聞こえてこない。
「まだ学校にいるのかなぁ?」
私は携帯電話を放り投げると、枕へと顔を埋めた。



それから数分後、携帯電話のバイブ音が私の耳元で鳴り響いた。
サブ画面には【ライト】の文字。
私は起き上がって通話ボタンを押し、耳へと携帯電話をつけた。

「もしもし」
『電話気付かなくてごめん』
「ううん。別に気にしてないよ。今暇?ちょっと話したいことがあるんだけど」
『僕もあるから、の家に行くよ』
「分かった。部屋にいるから来てね。玄関の鍵は開いてるよ」
『何時も通りだな。鍵くらいは閉めとけよ』
「大丈夫だよ。なにせお隣は刑事局長さん宅。しかも息子さんは未来の警視総監!」
『その安心感が狙われるんだよ』
「小言は聞きたくない―。来るなら早く来て」
『分かったよ。じゃあ直ぐ行くから』

プツッと切れた、電話。
私は料金と通話時間が表示された画面を見つめ、電源を一回押し、友達からもらったキャラクターの画面に変えた。
電池が残り1つになっていたのに気づき、充電器に差し込む。
そんなちょっとしたことをしている間に


ノック音。


「入って良いよ」

ドアが開き、ライトが入ってきた。

「一応、鍵閉めといたから」

ドアを閉めながら言う。
何時ものこと。

「で、話って何だ」

私は机の椅子に座り、ライトはベッドに腰掛ける。
ライトの右手に握られている、古びた黒いノートが気になった。

「粧裕ちゃんと今日の朝会ってね、聞いたの。ライト、ご飯あんまり食べてないんだってね。確かにやつれたかも」

私はライトの頬にそっと触れた。

「粧裕ちゃんには一応、受験生だから大変なのよって言っといたけど、そんな受験でやつれるような人じゃないでしょライトは。
何があったの?」

少し顔を前に出して、ちょこっと首を傾げ問う。
本当のこと言わないと許さないんだから、の意。


ライトは口端をあげてにっと笑った。
予想外の表情。
ライトは私の前に右手で持っていたノートを突き出した。
表紙に書いてある文字を読むと〔DEATH NOTE〕。

「デスノート…直訳で死のノート。何、それ?」
「僕はこれを使って世の中を変える。新世界の神となるんだ」

そう言ったライトの瞳は真剣で、嘘のカケラは1つも見当たらなかった。
私は言いだす言葉が見つけられず、黙っていた。
ライトは続ける。

「このノートは名前を書くだけで人を殺せるノートだ。死因を書かなければ皆、心臓麻痺で死ぬ。そこがデスノートの一番いい所だ。
僕はもう、主だった凶悪犯罪者の名前は書き終えた。徐々に悪人のレベルも下げていっている。それが皆心臓麻痺で死んでいくんだ!」

そう語るライトの顔は生き生きとしていた。
私は不安になる。

「どんな馬鹿でも「悪人がだれかに消されてる」ってことに気付く。世の中に知らしめるんだ。僕の存在を。正義をくだす者がいるって事を!!」

ライトの精神の状態が。

「誰も悪い事が出来なくなる。確実に世界は良い方向に進んでいく」

確かにそうだ。
しかし、それはあくまでもそんなことが出来たらの話で
ノートに名前を書くだけで人が殺せるなんて……私には信じられない。

「そして罪を受けて当然な悪人が心臓麻痺で死んでいく裏で、道徳のない人間、人に迷惑をかける人間を病気や事故死で少しずつ消していく。
それすらもいつか愚民は気付くだろう。「こんな事をしていれば消される」と…そして僕が認めた真面目で心の優しい人間だけの世界をつくる。
そして僕は……」


そんなこと、無理だ。


「新世界の神となる」


そんなこと………えっ?
神。
ネットで見た、救世主の文字が頭に浮かぶ。
心臓麻痺。
次々と殺されていく悪人達。
もしかして……

そこでふと思った。

知りたくなかった事実。
でも、知ってしまった。確信してしまった。
きっと彼は〔YES〕と答えるだろう。
今言っていることが真実ならば。

「…もしかして、ライトがキラなの?」
「あぁ、そうだ」

やはり、彼は頷いた。

「嘘でしょ……」
「嘘じゃないさ。だったら証拠を見せてあげるよ」

ライトは私の机の上からシャーペンを取ると、ノートにさらさらと字をつづり始めた。
そしてそこに書いた文字を私に見せる。
白い普通のノートに、一人の人の名前が書かれている。

「こいつの名前、知ってるだろ?」

ライトが指した名前に、私は聞き覚えがあった。
確か、連続強盗殺人で指名手配されている男の名前。

「ここに名前を書いてから40秒後にこいつは心臓麻痺で死ぬ」
「そんなこと…」
「あるんだよ。今日中には無理だと思うが、数日の内にこいつはきっと死体で見つかるよ。きっとニュースで流れるから確かめてみろよ」

分かった、と私は頷いた。






私はライトの言葉の99%は信じていない。
信じたくない、という切望。
こんなこと出来るはずがない、という自信。


ライトは笑ってた。
私の瞳を除いて。
まるで心の中を覗いているかのようで、恐かった。






















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原作と出来事の時間が合わなく少し修正をしましたが、ほとんど変わっていません。


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