受け入れなくちゃ…目の前の光景と彼の言葉
「……っ」
声が喉につまる感覚。
恐怖で汗が流れる。
冷たい…
信じてないのに
幽霊とかそういう類。
それは恐さを消すための手段だったかもしれない。
信じないことで恐怖を紛らわす。
でも、信じてない。
神も
死神も
03
落ち着くには少々時間がかかったが、不思議と心臓は落ち着いていき、私は冷静を取り戻しつつあった。
瞳に映る、ライト以外の生き物。
人間ではない。
この世モノではない。
黒く、禍々しい。
爪が尖っていて、大きな黒目、大きな赤い口。
「何者……」
声を出して初めて分かった。
私、震えてる。
冷静を取り戻したはずなのに、体はまだ恐怖しているようだ。
「俺?俺か?俺はライトが持ってるデスノートの持ち主である死神のリュークだ」
〔ソレ〕はどこか楽しそうに言葉を発した。
声は低く、しかにその声に恐怖はしない。
震えも段々と引いていき、私は大きく深呼吸をして、リュークをしっかり瞳に映した。
「死、神……」
「あぁ、そうさ。このノートは死神のノート。しかし今は僕のノートだ」
ライトは私の手からノートを抜き取ると、ある一ページを開いて私に見せた。
そこには夥しいほどの人の名前。
中には知った名前もある。
それは凶悪犯の名前。
ライトから教えてもらった人の。
「こいつらは皆心臓麻痺で死んだ。僕が裁きを下したんだ!」
その表情から〔人を殺した〕という恐怖、罪悪感などは微塵も感じられない。
あるのは、歓喜と快感と、そして自己満足。
頭はまだ信じようとしていない。
私の知らないライトが目の前にいる。
この世で一番ライトのことを知っているはずだった。
確かにそれはライトもそうだと思っている。
でも、知らなかった。
こんなライト。
私はリュークへと顔を向け、今浮かび上がった疑問を言葉として紡ぎ出した。
「どうしてライトにノートを渡したの」
私の問いに、くくっと笑った。
癪に障る。
「渡したんじゃない。これはただの偶然だ。今の死神は暇でな、退屈で、死神が言うのもなんだが、
生きている心地がしないんだ。だから俺は、人間界の方が面白いと踏んだ。だから落としたんだ。
俺のノートを。自分で人間界の奴を殺しても面白くないしな」
自分の欲望を満たすためだけに、ノートを落とした。
それを偶然ライトが拾った。
ただそれだけなのに、私の目の前の…私を取り巻く小さな世界が崩壊しはじめる。
「今すぐノートを捨てて、ライト!!」
不安が過ぎり、私はライトのシャツを握って訴えた。
しかしライトに言葉は届かない。
微笑を浮かべて私の頭を撫でて
「大丈夫だ。心配するな」
私の心配を感じ取ったらしい。
言葉に偽りはない。
あるのは妙な自信。
ライトは信じてる。自分の才能を。
私も信じてるよ。でも、恐いの。
あなたがいなくなることが。
この世からじゃなくて、小さな私の世界から。
ライトは強く私の両手を大きな手で包み込むと、何時になく真剣な表情で
「もう、後戻りは出来ないんだ。僕は、新世界の神となって世界を救う!」
言明した。
誓ったのは、神ではなく死神。
離した手に残る体温。
愛しいよ……ライト。
不思議と涙は流れず、心は赤く火照った。
「この事を知っているのは僕のほかにしかいない。分かってるよな」
「大丈夫。誰かに言ったりとか、それを感じさせる素振りは絶対にしないよ。
だって、ライトは失えない存在だから」
あなたが存在しなくなったら、本当に世界は壊れてしまうから。
私は守るよ、絶対に。ライト、あなたを。
例え、平穏な日々が奪われようとも。
あなたを失う以上の苦しみは、どこにも存在しないから。
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リューク登場。
でも、今後リュークはあまり出てきません。
その場にいるんだけど話さないって感じです、はい。
あくまでも、主人公とライト中心です。
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